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●今だから、開発エピソード Episode #1 CFT-60&CFT-61 ボビンホルダー

突然ですが、カタログや広告ではご紹介しきれない、商品特性や開発顛末などを不定期ではございますが、
ご紹介させていただきます。まずはタイイングツールです。


フライタイイングツールは製造メーカー自体が少なく、また技術革新もなかなか進まない、どちらかというと保守的な製品カテゴリーといえます。老舗ブランドのネームバリューは非常に高く、後発メーカーがこの分野で商品展開を進めるのは非常に難しいと感じていました。しかし、もともと金属加工を施した商品デザインを手がけていた経験もあり、時間はかかるかもしれないけど、面白いツール群が作れるのではないかという思いはずっと持ち続けていました。開発スタートから今年で早10年近くが経ちますが、それぞれのツールはどのように生まれたのか、ではでは、始まり始まりィ〜。


Episode #1 CFT-60&CFT-61 ボビンホルダー

ボビンホルダー、基本の基です。タイイングツールといえばボビンホルダー!ですよね?C&Fが最初に取り組んだツールはボビンホルダーでした。単にボビンホルダーを作るというだけでなく、ボビンホルダーがフライタイイングツール全体のコンセプトにも影響を及ぼすという意味では大きなテーマでした。あらためてタイイングツールを見ると、どこか裁縫道具の雰囲気をもっているように思いました。機能的ではあるけれど、やや質素なところなんかよく似ているなぁとも感じていました。そういう意味ではそれぞれのツールにもっと趣向性をもたせるのも一つのテーマだったのかもしれません。


見直すべき問題点

最初にセラミックチューブのボビンホルダーが世に出たのが何時のことなのか、正確にはわかりませんが、メタルチューブからセラミックチューブへの移行は、ボビンホルダーにとって最大のエポックといってもいいほどの出来事だったと思います。セラミックチューブがスタンダードなったことでスレッド切れを軽減させるという問題は、大きく改善されることとなりました。では、他に問題はないのか?もっと快適なボビンとはなんだろう?後発メーカーの我々は問題点を慎重に検証してゆくこととなりました。







スレッドが抜ける
では実際どんなことにユーザーの方々が不満を感じているのか?無作為に多方面の方とボビンホルダーについて意見交換させていただきました。あらためて聞くと、用途があまりにシンプルなせいか、なるほど!という意見はなかなかありませんでした。その中の意見の一つが「スレッドが抜ける」というものでした。そうか!あらためてこちらから聞き返すと「スレッドが抜けるとイライラする」という意見がかなり出てきました。すでにケースに採用していたマイクロスリットフォームをその解決方法に使うのには、時間はかかりませんでしたが、スレッドが抜け落ちないだけで、タイイング中のストレスがかなり解消されたのには驚きました。

 

テンションを安定させる
ハックルプライヤーも同様ですが、タイイングツールの中で製品ムラが多いのがボビンホルダーです。実は手に入りにくいものも含めると、かなり多種多様な形があります。もっとも一般的なのはアームのスプリングロッドをロウ付けしたものですが、製品ムラが多いのもこのタイプのものです。様々なテストの結果、C&Fではバネ性のある板材を使うことにしました。またロウ付けではなくプレスで抜いてアームのバネ性をできるだけ安定させることにしました。またテンションを安定させるためには素材を変えるだけではなく、表面のコーティングについても考えることとなりました。実はボビンとの接点を何らかの形でコーティングしているメーカーはほとんどありません。C&Fでは滑性に優れたテフロンコーティングをアーム全体に施すことにしました。バネ製のある板材とテフロンコーティングにより、スムーズな動き出しと滑らかな回転が実現できました。製品ムラについても100%改善できるわけではありませんが、ある程度は改善できたと思います。


ウエイト

重量はタイイングツールの製品化をする前から、1人のタイヤーとして重要なファクターだと思っていました。軽いことに特にメリットがないというほうが分かりやすいかもしれません。スレッドを引っ張りながら軽いツールを回すより、ある程度の重さのあるツールにテンションをかけながら回すほうが、使いやすいのではないかというのが実感です。C&Fのボビンホルダーは約17gありますが、これは他と比較してかなり重い部類に入ると思います。バスバグやSWフライなど、マテリアルを巻きとめた後にちょっと手を離したいときなどにも、ボビンホルダーの重さでマテリアルが緩みにくいのも、一つの機能と言えると思います。

チューブ
現在では多くのメーカーがセラミックチューブを採用しています。C&Fでもチューブに関してはやはりセラミックチューブを採用することになりました。しかしセラミックチューブといえどもスレッド切れを100%防ぐことはできません。成型には制約がありますが、供給メーカーと打ち合わせをしながら強度や内側のアールを調整しました。





外観
前述のように一見裁縫道具のようにも見えてしまうタイイングツールですが、趣向品としてオーナーズマインドをより満たすものにしたいという思いがありました。ローレットグリップや繊細な切削加工がその一旦を担っています。チューブのサイズをリング銘板の色で認識できるようにもしてみました。じつはこの銘板はプロ用マイクロフォンに使われている技術です。しかしこれを作れる会社は現在日本に1社しかありません。ほんの小さなパーツですがかなり高額なパーツです。でもこれひとつでグッと引き締まりますよね。ボビンホルダーは発売後一度だけマイナーチェンジをしています。マイナーチェンジ後はヘッドが若干長くなり、より精悍な印象となりました。(写真参照)


追加アイテム(CFT-60SW他)
現在のバリエーションは僅か2種類。いままでにも多くの方から苦言やお褒めの言葉をいただきました。同時にたくさんのリクエストもいただいています。じつはボビンホルダーの追加アイテムを検討していました。その一つがこの春発売となったSWフライ用ボビンホルダーです。
アメリカを中心に、タイイングマテリアルについて日進月歩の進化をみせているSWフライですが、SWフライには淡水のフライに比べ遥かにフライの耐久性を求められます。中には10年近く前に巻いたフライを今でも大切に使っているアングラーもいます。バランスのとれたフライは魚もよく釣れますが、丈夫にタイイングすればメインテナンスをしながら10年近くも使うことができるということです。
すでにブレーキを内蔵しているボビンホルダーは数社から発売されていましたが、C&FツールのユーザーからもSWフライ用のボビンホルダーを望む声をいただいていました。C&Fではこれらの声を基に「耐久性」「ブレーキ」「ウエイト」を重要なファクターととらえ、SWフライ用のボビンホルダーの開発を進めました。

耐久性
もっともトラブルが出やすいのがチューブです。伸びの少ないPE系のスレッドを使って、スレッドとチューブの角度をつけてグイグイ締めこむとどうしてもチューブが折れやすくなります。今回のSW用ボビンではギリギリまでチューブを隠すことでチューブの折れを防ぐことにしました。またボビンホルダー全体の長さも若干長くしました。これは特に3/0以上フックの場合にはもう少し長いほうがタイイングしやすいのではという意見によるものです。

ウエイト
たくさんのマテリアルをキッチリ巻きとめるためには、スレッドにより大きなテンションをかける必要があります。タイイング中に手を緩めたときにもスレッドが緩みにくい重量がボビンホルダー自体にほしくなります。C&Fでは前述のチューブを覆うためのネック部分のメタルパーツが重くなりました。また後述のブレーキのためにボビンに通すブラスシャフトで重量をかせぎました。従来のボビンが17gだったのに対しCFT-60SW(SW用ボビンホルダー)は29gです。約70%重くしたことになります。17gという重さもボビンホルダーの中ではかなり重いほうに入ると思いますが、29gという重さは間違いなく世界でもっとも重たいボビンホルダーということになると思います。

ブレーキ(グラビティーキット)
スレッドにより大きなテンションをかけるためのブレーキです。大きなテンションをかけるとボビンがアームから外れてします煩わしさを感じている人は少なくないことでしょう。
CFT-60SWには前述のボビン内に通すブラスシャフトのノブを組み合わせることで、独自のブレーキシステム(グラビティーシステム)を開発しました。ボビンに通したシャフトを両サイドからスクリューで締めこむことでスレッドに任意のテンションをかけることができます。そして度々ボビンがホルダーから外れる煩わしさを完璧にシャットアウトすることができます。

サンプルを国内外のテスターやモニターの方に試していただいた時点で、かなりの反応を得ることができました。「もうこれ以外使いたくない!」「早く売り出せよ!」といったかなりテンションの高いレスポンスでした。手前味噌ではありますが、SWフライや大型スティールヘッド/サーモンフライのタイイングにはもっとも適し専用ボビンホルダーが出来たのではないかと思っています。タイイングツールというカテゴリーの特性上、すぐにドラマチックな違いを実感できるとは限りましせんが、長くお使いいただくことできっとその特性やコンセプトを実感いただけることと思います。ぜひ一度お試しいただきたい商品です。

発売から早10年近く経つ中、ようやく追加アイテムを増やすことができました。まだ発売は決まっていませんが、他にもいくつかのバリエーションを検討中です。乞うご期待!

あまり事細かに説明するというのは本意ではありませんが、最初のタイイングツールだっただけに思い入れも強く、ちょっと文字数多かったですね。どうかお許しください。 


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