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●開発エピソード Episode #10 CFT-1000マルコポーロフライタイイングシステム 「誕生裏話」

 

きっかけ

今までベーシックなツールを紹介してきましたが、そのまとめとなるのがマルコポーロフライタイイングシステムです。

(以下、マルコポーロ) タイイングツールに取り組むきっかけとなったのは、当時新たに締結したアメリカのStream worksとの販売契約でした。※現在のStream worksとは違います。
それまでの全てのSサイズケース、Lサイズケース、アクセサリーが全米で紹介されることとなり、今までとは明らかに違うマーケットからの注目を浴びることとなりましたが、我々としては“ケース屋”と認識されることにはやや違和感がありました。
そこで今までのプラスティックとは素材が違う、そしてもともと興味のあったタイイングツールに本格的に取り組んで見ようということになりました。


C&F DESIGNのフライタイイングツール
日本ではあまり見かけることがありませんでしたが、海外では当時からいくつかのメーカーからトラベル用のバイスやツールのセットを店先で見かけることができました。そしてその中のいくつかについては手に入れ使ったりもしました。フライマンに旅行好きが多いのは、こんな商品があることからも感じることができます。 ただし、トラベル用のツールの多くはミニチュアのようなものが多く、可愛らしさはありますが、道具としての使いやすさについては…という感じでした。最初のタイイングツール、CFT-60(ボビンホルダー/スタンダード)を発売してから、マルコポーロの発売まではたっぷり1年以上かかりました。じつは、最初のボビンホルダーを発売した時点で、LサイズWPケースに必要なツールをひとまとめにできるマルコポーロのアイデアは、最終的な形としてすでにイメージしていました。それぞれのツールは、基本性能をしっかりと備え、タイイングキットのひとつとしてできるだけ多機能であることが求められます。そして我々がこだわったのは、“ミニチュア”ではないことです。それは、ホームユース用にデザインしたものをいかにコンパクトに収納できるかでした。






 

絶対条件
必要十分なツールを全て1つのケースに無駄なく収納してゆくことは、まさにひとつひとつのツールを組み込んでゆくパズルです。蓋側の厚みは約6mm、ケース側の厚みは約17mm、しかしミニチュアであってはならないわけです。機能を追いかけつつ、タイトなサイズの制約をクリアーするのは、それはそれはスリルのある作業でしたし、テーマとしては十分なやりがいが得られるものでした。それぞれの難しさや面白さは、そのサイズに支配されるものではありません。それぞれのツールは魅力や難しさに溢れています。バイスの試作を終え、最後のピースをケースにはめたときの快感は、デザイナーの特権たるもので、言葉ではちょっと言い表せないとても大切な瞬間だったのは、言うまでもありません。



バイス
LサイズWPケースに収納するということで、もっとも難しそうなのがバイスです。結論から言えば、バイスについてもジョーのサイズはホームユースのジョーとまったく同じものを使っています。マルコポーロに使われているジョーは、CFT-9000CFT-3000にも使われています。そしてジョーはレバータイプではなく、フックのサイズに関わらずジワッと締め込み、ホールド性能が高いツーポイントスクリュータイプを採用しました。ベースとアームについてはLサイズケースに収まるサイズを上限とし、安定性の軽量化を徹底追及し、後のマイナーチェンジでは、さらに軽量化をすることができました。ベースをケースの中に入れて使えばケースそのものがダストポケットにもなりますし、別売りのCFT-190(マグネティックダストポケット)をアームに取り付けることもできます。またジョーはセミフリーの状態でアームに固定していますので、指で回すことができ、簡易なロータリー機能を併せ持っています。ホームユースでCFT-9000やCFT-3000をお使いの方であれば、普段と変わらないフィーリングで遠征先でもフライを巻くことができると思います。







ケース
マルコポーロにはCFT-1000とCFT-900の2種類があります。2種類の違いはその内容です。CFT-1000はキットに含まれるほぼ全てがセットされています。(ツィーザー以外)そして意外と知られていないCFT-900ですが、こちらはケースとバイスだけがセットされています。それ以外の各ツールについては普段ホームユースで使われているC&F DESIGNのタイイングツールをセットしていただくためのキットです。同じものを2つ購入する必要もなく、C&F DESIGNのタイイングツールユーザーの皆様には、もっとお役立ていただけるパッケージだと思います。



 


C&F DESIGNにとってのマルコポーロとは

ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、C&F DESIGNは1人の工業デザイナーが立ち上げたブランドです。工業デザイナーの仕事の範囲は多岐に渡りますが、一般的に多くは企業からの依頼で商品をデザインします。しかし依頼を受けたデザインサービスと自らブランドを立ち上げて自分の製品をデザインするのでは、その意味は本質的にまったく違います。そこには大きな障壁があり、アパレルデザイナーがオリジナルブランドを持つことが珍しくないのに対し、工業デザイナーがオリジナルブランドをもつことが少ないのも、ひとつの障壁の表れと言えるでしょう。冒頭たっぷり1年以上かけて製品化しましたと申し上げましたが、仮にこれが依頼を受けた仕事であれば、呑気に一年以上も製品化を待ってくれるクライアントなど、なかなかいないと思います。という事は、このマルコポーロという商品のプロジェクトは、依頼を受ける仕事としては成立する可能性が極めて低いということになります。そしてそこにデザイナーとしての醍醐味を見出すことができるわけです。1年以上に渡り、わがままのままに徹底的にこだわり、没頭し、自分のためにアイデアを具現化するということは、デザイナーにとって極めて贅沢でスリリングな体験でもあるわけです。そういう意味において、一連のタイイングツールからスタートしたマルコポーロ開発プロジェクトはC&F DESIGNにとって商品の枠を超え、まさに我々のConceptとFormを世界に問い質した、ブランド立ち上げ以来最大のプロジェクトでした。 コピー品がすぐに出回る現代の市場において、マルコポーロをコピーした商品は10年経った今も見当たりません。市場において唯一無二の商品であり、このプロジェクトがいかに困難なものかを証明することもできたのかも知れません。


全3回にわたり、マルコポーロについて、熱く語らせて頂きます。

次回は「広告との戦い?」をアップします。

どうぞお楽しみに。


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